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病害虫の駆除と農薬

今年、ウメやアンズなどバラ科の植物につくヨコバイという虫が三島市界隈でも大発生しています。ヨコバイが葉を吸汁し、葉が傷み落葉、アーモンド(バラ科)の花が「狂い咲き」しました。ヨコバイを駆除するための、農薬について 少し専門的になりますが お話したいと思います

目次

ヨコバイの大発生

(有)コジマファームさん(以降コジマさん)は自家製のハチミツや自然農法の野菜を生産し販売しています
横浜自宅(家族は妻と子が住んでいます。私は三島市の生家に単身赴任です)に近く、ハチミツがおいしいので、時々ハチミツを買いに行きます
コジマさん(ご主人)と雑談する中で東京都や神奈川県でウメにヨコバイが大発生し、葉が落ちたりしていて、来年はかなり収穫が落ちるのでは・・という話を伺い アッと思いついました

ヨコバイとは

今回のウメ等バラ科の被害は、ヨコバイ科の一種でモモヒメヨコバイSingaporashinshana(Matsumura)が原因だそうです
セミを小さくしたような形で、同様に植物を吸汁します。3mm程度と小さく、写真を撮ろうとすると横に移動(ヨコバイ)し、さらに近づくと 飛んでしまいなかなかうまく撮れません
昨年あたりから 各地で確認され 今年は全国的に広がっているようです
モモヒメヨコバイの成虫は体長3mm程度と小さいですが
「被害としては、成虫と幼虫が吸汁することで、葉の表面が白化。激しく加害されると落葉することがある。」そうです
(ヨコバイの写真と文は JAcomより引用)

アブラムシとかん違いしていました

(少しそれますが)アブラムシはとても複雑な生活史、生態の昆虫です
葉裏や花のツボミなどに小さなゴマのようなモノがびっしりつき、分泌液でベタベタしている姿に気づくことがあると思います
これの多くは無翅(翅、ハネのない)雌です。アブラムシは単為生殖(雌だけで子を産む)や両性生殖によって増えます。一時期に有翅(翅のある)雌雄が発生することがあります
私は、ウメのハムシはこの有翅雄かと思いこんでしまったわけです
(写真は住友園芸化学から引用)

アーモンドの花の狂い咲き

8月末にわが家植木畑のアーモンド(バラ科)の葉が全て落ちてしまいました。またウメの葉も色が悪く(白化)、落ちるのが早いなと思っていました
すると、9月なのにアーモンドの花が何輪か咲きました「狂い咲き」です。不思議と思っていましたが、ヨコバイの吸汁によって傷んだ葉が落ちてしまったことが原因だったようです
バラ科の植物ウメやアンズやサクラ、アーモンド等は、翌春に花を咲かせるために夏頃に花芽や葉芽を作ります
厳しい冬を越すために、夏から秋になると花芽の成長を抑える植物ホルモン(休眠ホルモン:アブシン酸)が葉から供給され、冬に開花、芽吹かないようになっているそうです
ところが、今回のように虫の食害などによって落葉したことで、葉から成長抑制ホルモンが出なくなり、開花してしまったようです
この夏に準備された花芽や葉芽の一部が秋に開いてしまったことで、来年の花芽、葉芽が減ったことになります。来年のウメ等の収穫に出てしまいそうです

農薬と残留農薬

この仕事に就いて、病害虫の駆除のために農薬を使うようになりました
一般に「農薬」という言葉は、やはりネガティブなイメージあると思います
自分でもよく理解し、お客様に説明するために静岡県農薬管理指導士の講習をうけ修了しました
農薬使用者に対し、農薬の適正使用及び管理について情報提供を行う者(販売者等)が受講する県が実施する講習です

農薬の残留基準

農薬に対しての不安の1つに「残留農薬」があると思います
農薬を使用した結果、作物に残った農薬を「残留農薬」と言います
農薬は病害虫の駆除や除草のために農地などで散布されますが、目的を発揮した後、すぐに消失しません
収穫された農作物にそれが残りそれが口に入ったり、農薬が残った作物を飼料として食べた家畜のミルクや肉等を食べ、様々な経路で私たちの体に入ります
私たちの健康を守るために、現在登録されている農薬は、そのラベルに表示されている使用方法(適用作物、病害虫、希釈倍数、使用液量・時期・回数等)を守れば、農薬が基準を超えて残留することは無いように厳しく管理されています

農薬の残留の基準は、以下のように求められます
体重1kgあたりの許容1日摂取量(ADI:acceptable daily intake)は、その農薬を人が一生涯にわたり毎日摂取しても危害を及ばせないとみなせる量のことです
これに日本人の平均体重(53.3kg)をかけたものが、日本人1人、1日当たりの摂取が許容される量になります

まず、ラットやマウスの動物実験で影響の見られなかった投与量(無毒性量/NOAEL:no-observed adverse effect level mg/kg/日)を求めます
これは動物実験であることや個人差があることから 不確実係数1/100をかけたものがADIです

要約すると、農薬の残留基準は「動物実験から求められた、人が生涯摂取しても影響のない農薬の量の1/100」ということになります

モモヒメヨコバイに使える農薬が無い!

ところが、発生したモモヒメヨコバイは適用農薬がありませんでした
適用作物、病害虫以外に農薬は使えません
農薬取締法の農薬使用者の義務に違反してしまいます

駆除方法の発生した葉を除去、穴に埋める・・では、幼虫期やごく初期なら効果はあるかもしれませんが、現実的ではありません

以下は令和3年度 病害虫発生予察 特殊報 第3号(令和3年10月18日)東京都病害虫防除所  より抜粋引用

「6 防除対策
(1) 令和3年 10 月 18 日現在、本種に対する登録農薬はない。
(2) 本種の発生及び被害の早期発見に努める。発見した場合は速やかに寄生葉を除去し、深めの穴 に埋却するなど適切に処分する。」

そんな中、今年 2022年8月3日 クミアイ化学工業株式会社のクミアイ マブリック水和剤20が適用拡大登録となり、ウメの防除に使えることになりました

まとめとして

外来種等、天敵の無い病害虫が入り込むと急速に広がることがあります
それを駆除するための、適用されている農薬が無く、対応に苦慮することがあります
このように、農薬は使用法等厳しく管理されていると知っていただく機会になればと、少し専門的ですが、お話ししました
わからないことも多いと思いますので、専門の方や、弊社にお気軽にご質問ください
最後までお読みくださり ありがとうございました

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