樹や庭の基礎知識 

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シンボルツリー・・管理しやすい樹と悩ましい樹

3回にわたって シンボルツリー選びから庭づくりをお話してきました。その中で、まず好きな樹を選んでくださいとお伝えしました。植える場所や管理方法である程度は維持できますが、植栽する環境と樹の特性が大きな差があると、管理が大変で、お客様の負担になってしまいます

検索すると「庭に植えてはいけない木 ランキング」等ありますが、私なりの視点で、植木屋になって経験してきた「悩ましい樹」についてお話したいと思います

(今回は、風水や言い伝え的なものは、お話ししません)

目次

管理しやすい樹とは

日本の庭は、四季の移り変わりなど自然を楽しむ文化が、他の国の庭より多種多様な種類の植物を取り込んできました。したがい、日本の造園や管理技術は高いレベルにあると思います。植栽する環境(気候や庭の広さ)に、植物に少々あっていなくても、管理技術でカバーしてきたと言えます
一方、ムリをしているわけで、樹種によっては、管理を怠ると、傷んでしまったり 大きくなりすぎて手に負えなくなったりしてしまいます

管理しやすい樹とは、どんなものか?まずはお話したいと思います


1)成長がゆっくりな樹、大きくならない樹

成長がゆっくりであれば、剪定する頻度も少なくて済みます
また、自然環境で育っていたら、このぐらいまで高くなるといった、樹種による目安があります
庭木の範疇を超えて高くなるような樹は、大きくならないように剪定が必要になりますが、それほど大きくならなければ、管理が楽になります

2)寒暖など環境にあった樹

寒さに弱く、霜にあたると枯れてしまう樹は、その時期 防寒の養生や屋根の下や家に移動したりすることが必要になります
私は経験ありませんが、降雪地帯では、雪で樹の枝が折れたりしないように、樹の養生をします
また、乾燥に弱いものは、地植えであっても 夏のまめな散水は必須になります
このように、環境に合わないものは、管理に経費や時間がかかります

3)樹形が維持しやすい樹

樹は自然環境の中では他の植物と競争しています。そのため枝の伸ばし方もそれぞれです
樹種により自然環境で育っていたら、こんな形になるといった樹の個性があります
最初は細い苗木が、生育するに従い、その樹形になっていきます。樹形が庭やイメージにあっていれば最適です

4)増えすぎない樹(植物)

植物の増え方は 幾通りもあります。種で増えるもの、株分けやヒコ(根元から生える新しい枝)して増えるもの、地下茎が広がり増えるものなどです
庭木は、あまり増えないものが管理しやすいです

5)病害虫が着きにくい樹

病害虫がつきにくい樹を一番 重視される方も多いです
病気が発生すると、葉をふるってしまい、また害虫が着くと、食害されて孔だらけや、枯葉になったりして樹本来の美しさを失ってしまいます
また、虫そのものが嫌いという方もいますし、中には毒毛などを持ち 触るとかぶれてしまう虫が大発生することもあります
病害虫が発生すると、都度 薬剤散布などの管理作業が必要になります

6)落葉などが少なく片付けが楽な樹

落葉樹は秋には葉が落ちます。常緑樹も春に新芽が芽吹くとともに、葉が落ちます。また、樹によっては花が終わった後 沢山 花弁を落とします
また、実がなるものは、収穫しなければ、その実が落ちるので、後片付けが必要になります
樹種によって、葉の大小、葉の重さ、少しづつ(だらだら)散るものと、一気に散るものなどあります

7)その他:トゲなどが無い樹、毒の無い樹

防犯の役割などからか、生垣等にはトゲやトゲのある葉の植物、カラタチやヒイラギなど使われていました
また、レモンやユズなども鋭いトゲをもち、ボケやザクロなども同様です
植木屋になって なんて庭にはトゲのあるものが多いのかと思いました。やはりトゲがあると剪定等 管理作業が大変になります
また、庭木には葉や幹、実に毒のあるものが多いです。触っただけでかぶれる、ウルシなどは論外ですが、子供が間違って食べたりしないように教えることも自然と親しむために大切と思いますが、これも毒が無い方が良いです

悩ましい樹たち

管理しやすい樹の反対、管理しにくい、手間のかかると感じている樹、悩ましい樹の特徴と例をお話します

1)成長が早い樹、大きくなる樹

シマトネリコ(モクセイ科トネリコ属)は常緑で明るい緑色の羽状複葉(専門用語ですいません)の軽やかな印象で、とても人気のある樹です。一方とても成長が早く、小さな苗を買って自分で植えた苗が、いつの間にか こんなに大きく茂って、どうしてよいか?わからず 相談されるお客様が多いです。当初の印象を長く維持するためには、通常の剪定の他に根元から増えるヒコ(株立ちの新たな幹)を大切に伸ばし、太くなった幹を根元で伐るといった更新を行います
ユーカリ(フトモモ科ユーカリ属)も、とても成長の早い樹です。フトモモ科の多くは、病害虫の被害が少なく、トロピカルな花や香りのよい葉など魅力は多いです。コアラの食べ物と知られるユーカリはイメージも良く、お庭に植えているお客様も多いです。ところが、自生するオーストラリアでは樹高 数十メートルになるといわれるだけあり、気づくととても大きくなり、手に負えなくなり、相談の連絡があります
ケヤキ(ニレ科ケヤキ属)や、サクラ(バラ科サクラ属)の品種によってですが、同様にとても大きくなります
ケヤキは武蔵野の原風景と言いますか、旧街道沿いの旧家のケヤキの屋敷林など 豊かで美しく感じます。しかし通常の戸建ての庭に植えるには、大きくなりすぎます。サクラもソメイヨシノやカワズザクラは成長も早く、また横に広がる樹形でもあり、植えて数年で驚くことになると思います
人気のシマトネリコや一般によく知られた名前のユーカリ、ケヤキ、サクラ等ですが、庭木としては植える前に良く考えた方が良い樹の一例です

2)寒さ暑さに弱い樹

大変人気のヤシ。品種が沢山あり、耐寒性の強いもの弱いもの様々です
観葉植物としても人気のシンノウヤシ(別名:フェニックス ロベレニー ヤシ科ナツメヤシ属)は、霜が降りる地域では、越冬は難しいと思います
私の友人(湘南地区在住)は、冬場は 室内に避難していたのですが、1部屋占めてしまうために、コモ(ワラを編んだもの)を葉に巻き、屋外で越冬を試みましたが、芳しくなかったようです
同じヤシでも、ココスヤシなどは、耐寒性があり、三島界隈でも露地植えで問題なく越冬しています
柑橘類も霜にあたると傷んだりします。霜が降りにくい(冷気のたまりにくい)傾斜地や日当りの良い場所(日向い)などに植えるなど、配慮が必要です
環境にあった元気な樹は、病害虫の被害も出にくい傾向があり、管理を楽にします
近所のお庭で、元気に育っている樹を観察することは、とても参考になります

3)樹形があばれる樹

写真のロウバイ(ロウバイ科ロウバイ属)は冬に先駆け咲き、蝋細工のような繊細な花弁と良い香りで人気のある低木です
葉は対生(茎、枝の同じ位置に対の葉をつける)で、枝が樹の内外または左右に伸び、樹形が乱れやすい樹です。花の時期以外は、7-15cm程の大き目な卵型のガサガサな葉が茂ります(個人的な感想ですが、あまり美しくないです)
人気のオリーブ(モクセイ科オリーブ属)、フェイジョア(フトモモ科フェイジョア属)も対生で樹形が乱れやすいです
毎年、剪定していれば良いのですが、長年 放任したり、邪魔になる枝や手の届く枝をきっているうちに、大きく形が乱れてしまっている樹が多いです
日本の庭園に良く使われるモミジですが、なかなか剪定が難しい樹です。広い庭に植えて、手をつけなければ、自然の形で良いですが、隣地にはみ出したり、家にあたってしまうからと、強い剪定をすると、切った部分から強い徒長枝が沢山出て、それをまた切るとまた出てと悪循環が始まります

4)地下茎などで増える樹(植物)

日本の庭園で使われるタケは竿の光沢のある色や葉など、日本庭園を彩る植物です
同じく日本庭園で使われるトクサも同様ですが、地下茎で増える植物は、植栽の範囲を超えて、庭中に広がってしまいます。抜いても地下茎が残るため、完全な除去は、なかなか難しいです
鉢などに植えてから庭に配置し、地下茎が逸脱しないような配慮が必要です。ツル性のフジなども、地面に匍匐(ほふく)茎を広げるので、管理に手間のかかる植物の1つです

5)病害虫に注意が必要な樹

病害虫が少なく管理が楽と思われていた樹が、生垣等で人気になるに従い、病害虫が多発する例があります
写真のヒイラギモクセイを食害するヘリグロテントウノミハムシやレッドロビンの褐斑病などは、その例と思います
お客様のヒイラギモクセイの生垣は、年複数回の薬剤散布をしていますが、なかなか根絶できません。テントウノミハムシの幼虫は葉の中に潜って食害し、薬剤が届きにくい面があります。お客様の分譲地近所の植栽を確認すると、各戸にヒイラギモクセイが植えてあり、中にはボロボロに生垣もありました。1軒の庭で駆除しても 他の家で放任していては、なかなか根絶できないわけです
レッドロビンは常緑で、新芽の鮮やかな赤い葉が魅力的で、一時 生垣などで沢山使われましたが、褐斑病にかかると、葉をふるってしまい、無残な姿になります。新芽の伸びる時期に殺菌剤を複数回散布することで、改善することができますが、根気が必要です
市街地の果樹は病害虫が少なく管理が楽で、同じ品種のものが沢山あると病害虫の被害が出やすいという、自然の仕組みは、興味深いですが、悠長なことも言ってられませんので、その地域の病害虫などに詳しい プロの方に相談すると良いです
また、チャドクガ等 毒毛を持つ毛虫が発生しやすい樹、チャドクガならツバキ、サザンカ等。頻度はそれほど多くないですが、イラガならカシなどは要注意です。チャドクガはかぶれ、アレルギー体質の方は、通院が必要な場合もあります

6)落葉や花弁の片付けが必要な樹

一面 樹下を覆う キンモクセイの花びら。なかなか美しいですが、三島界隈では2回程咲くので、その都度 掃除することになります
サザンカの生垣も、時期になると花弁を散らし、一面広がります
常緑樹も新芽の更新の際、葉を散らします。わが家の大きな(2階よりはるかに高い)クロガネモチは4月過ぎに 大量の葉を散らします
落葉樹は秋に葉を散らします
あるお寺で、サクラをモミジに植え替えているので理由を伺うと、サクラはだらだら長い期間落葉するけど、モミジは一時期に落葉し、掃除が楽だからとのことでした
カキ農家さんが、カキをやめてミカンに植え替えている理由は、カキは葉も大きくて重く、秋に一斉に落葉し、片付けが大変なので、常緑果樹のみかんに替えたと言われてました
定期的に剪定して、樹の大きさを保ったり、透かして枝数を減らしたりすることも有効ですが、樹種の特性を理解して、樹種の選択が大切です

7)その他:トゲ・毒がある樹

トゲや毒のある樹は、それぞれの理由があるので否定はしませんが、小さいお子さんが居るお庭では、植栽を控えた方が良いと思います
特にユッカ(リュウゼツラン科ユッカ属)やソテツ(ソテツ科ソテツ族)等 葉の先端が鋭い樹種は、植栽場所などによっては、子供の眼にあたったりする恐れがあります
幹に鋭いトゲのある、レモン、ザクロ、ボケ、ピラカンサ等など剪定する際は、皮手袋と手甲、防護メガネなどトゲ対策をして、剪定や収穫をします

「悩ましい樹」のまとめとして

樹種の選択では、好きな樹と庭(や家)との相性をみる事
植えてからは、定期的な剪定と、手に負えなくなる前に、プロに相談をしてください

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