樹や庭の基礎知識 

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竹垣をつくりませんか

8年ほど前、お客様から自宅の古く傷んだ竹垣の補修の依頼があり、作成した建仁寺垣という竹垣です。割って晒した竹を表裏あわせて使い、外から見ても、自宅側から見ても良いように作ってあります。坪庭がぐっと映えて、素敵な空間になりました

竹垣は、「枕草子」や「源氏物語」にも出てくるそうで、古くから日本人とかかわりがあります。材料の組み合わせはもちろんですが、高さ、幅、遮蔽度合いなど、自由度も広く、また節の位置・配置など、職人の腕の見せどころもあり、作っていてとても楽しいです

今回 人工竹を使った四ツ目垣をつくりました。竹垣をつくる機会はあまりありませんが、今回の記事を通して竹垣の素敵さや楽しさをお伝えできると良いです

目次

今回は墓所の四ツ目垣の付替えです

四ツ目垣

お客様から お墓(三島市内)の竹垣を付替えたいという依頼がありました。お墓の竹垣と言われても想像できず、お墓の一角に小さな竹垣があるぐらいに思って下見に伺うと、幅4m×3mほどの大きな墓所を囲む四ツ目垣でした

下見から図面の作成

現状の竹垣を計測すると、杉柱の間隔、立子(竹垣のタテの竹)のピッチ等、結構自由で、墓所の四隅に柱を立ててから、竹垣を組んだのでは?と思うような感じでした
全体のイメージが変わらない範囲で立子のピッチを揃え、杉柱の間隔を決めました

見積書の作成と人工竹を選択

見積図から見積書を作成し、お客様と打合せを行いました
まずは 通常の青竹を使ったものを提案しました。お客様から、耐久性を重視し、人工竹での再見積もりの要請がありました。打ち合わせで、人工竹でもしっかりした感じと自然な趣のある生垣になるように、節に塗のある「エイコー もがみ」の直径30mmと21mmを組み合わせることになりました
押縁(横の竹)は30mmを使い、また人工竹は、横にすると強度が不足するため、専用のアルミパイプを挿入します
立子は、要所に30mmを使い、裏側や端は21mmとしました
自然の竹は太さや元と末など変化がありますが、人工竹は太さが一定の為、同じ太さが並ぶと平板で不自然になるので、見積りに加えました

廃材の処理費を入れていませんでした

竹垣をつくるのは楽しいので、作成することばかり考えていて、解体の時間や、廃材の処分費を入れるのを忘れていました
お客様から指摘をうけ、廃材の処分費を追加させていただきました
実際の作業でも、柱や竹の固定が、釘、コースレッド(木ネジ)、針金、シュロ縄と様々で、解体に時間がかなりかかってしまいました

四ツ目垣の作成

お寺の手入れはやっていますが、墓所の作業は、はじめてです。お寺さんに事前に日程をお伝えし、作業前後にあいさつをさせていただきました

杉柱立てから押縁の設置

材料は事前に、図面の長さに切ったり、加工しました
杉柱の位置がずれてしまうと、すべて狂うことになるので、慎重に据えました(詳しくは後で説明します)
位置だけでなく、垂直もしっかり出さないと、少しの傾きでも 大きく寸法が変わってしまいます
(青竹は、大まかに切っておいて現地で切りなおすので、多少の誤差は吸収できます)

こんな工夫をしました

押縁を柱に取り付ける際は、竹の端部を斜めに切って、柱の形状にあわせ、釘やコースレッドで固定します
釘孔を事前にあけてから釘などで固定しますが、経年的に割れやすいです
お客様からの長く持つようにという要望もあり、また 人工竹用の固定用の金具などありますが、今回はそれを使わずに、事前に柱に穴をあけて、そこに押縁をさし込み、コースレッドで固定しました
人工竹は太さが一定だから、できる工夫です
さし込む寸法もあるので、柱の位置や垂直をしっかり出しておかないと、柱に刺さる部分(シロ?)が無くなってしまいます

立子の結束

立子は上の押縁にはシュロ縄で、イボ結び。下段はからげ結びで結束しました
両方とも同じイボ結びで良いのですが、墓所の周囲に空間が少なく、体が入りにくいため、からげ結びにしました
立子は青竹などでは、天端に水がたまらないように、節切り(竹の節ところで切る)ですが、人工物なので、節の位置できると、すべての立子の節の位置がそろってしまい、不自然になってしまいます。効率よい部材どりも優先しました。天端には専用のキャップをしました
立子は基本的に1本づつ結束しますが、一部2本結束しリズムをつけてみました
こんな遊びが、竹垣の楽しさです

四ツ目垣の完成

今回は、細かいところで楽しみながら、四ツ目垣を作成しました
砂利を敷き直し、掃除をして 完成です

竹垣づくりのまとめとして

四ツ目垣 正面

実は既製品以外で、人工竹を使った竹垣は、はじめてで良い経験になりました
人工竹で、自然な雰囲気の四ツ目垣が出来たと思います
お客様も、気に入っていただきました
最初に紹介した建仁寺垣は遮蔽垣(目隠しになる垣根)の代表的なものですが、今回の四ツ目垣、囲っただけですが、そこに境界や空間ができる面白さは、日本文化ならではのものと思います
今回の垣根は墓所で お庭とは異なりますが、閉鎖感の無い明るいお庭をつくる良い素材と思います

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